父が書きました。  T


子供の頃 私の家から10メートルほど行ったところに公設市場がありました。「ALWAYS 三丁目の夕日」の世界を持ったその市場には
八百屋さんお菓子屋さんお米屋さん魚屋さん呉服屋さん天ぷら屋さん瀬戸物屋さんお寿司屋さんとお店がたくさんありました。そうそうコロッケも揚げていたお肉屋さんは、「夜明けの停車場」を歌ってらっしゃった歌手で俳優の石橋正次さんのご実家で店にはポスターが貼ってありました。お姉さんが、お綺麗でした。
まだ幼稚園か小学校低学年の頃でしょうか、毎日のようにお遣いに行っていた私は、お店の人とも顔馴染みです。ある日市場の誰かに言われました。「けいこちゃん お父ちゃんにそっくりやな」(ガーン)家に帰った私は泣きました。お母さんっ子だったし、四角い顔をした父より母の顔の方が、良いのに 何で?泣きじゃくっている私を見た父は、心配したんでしょうね。「大丈夫か?どうして泣いてんねん」私は、答えました。「市場でお父ちゃんにそっくりやって言われてん」自分の事で精一杯だった私は、その時の父の事は 全く覚えていませんが、父は相当ショックだった事でしょう。
今思うとそっくりとまでは 言いませんが、鼻のあたりが似ていると思います。父は、定年退職後 家でお習字を教えていましたが、私も字を書くのは好きです。それから真面目にコツコツするところも似てると思います。そして父は、ずいぶん長い間日記を書いていました。亡くなってからその字を見るとあんなに綺麗で素晴らしかった父の字が 晩年すっかり変わってしまい読めません。辛かったです。
さて、最近 私も日記を書き始めました。なのでこれも父と似てる事になります。
さてさて 残念な事ですが、その公設市場は 今はもうありません。今そこにあるのは、子供の保育施設です。可愛い子供達が 今日も遊んでいます。その子供達の可愛い姿を見て、もしこの子達の中にお父さんに似た女の子がいて 何気なく誰かが「○○ちゃんのお顔は、パパにそっくりだね」すると女の子が泣き出す。そっくりと言った誰かさんは、びっくりするでしょうし その出来事を後で知ったパパは 相当ショックを受けるでしょうね。余談ですが、うちの娘はお父さんに似てると言われると とても喜んでました。「うちは、橋の下の子やなかった」橋の下の子 という言い方 めちゃくちゃ昭和だと思いませんか?
2020年5月14日 T

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